あ と が き


 上越教育大学では,組織,運営,教育研究活動等全般にわたる年次報告書を昭和61年度(昭和60年度版)から作成・発行してきており,この平成22年度版で第26集を刊行するに至りました。このあとがきでは,本年度の年次報告書について各章ごとに総括します。

 第一章「組織の運営状況に関する自己点検・評価」に関しては,管理運営組織等,学生支援,附属施設等,その他においては概ね順調に取り組まれていることが伺えますが,教育・研究組織等に関し,組織の在り方について各組織がそれぞれの立場において課題を挙げています。本学としてもその内容を見極めつつ,更なる向上を図っていく必要があります。
 なお,本年度は,特に注目される点として以下のことをあげることができます。

<ホームページリニューアル>
 ホームページをリニューアルすることにより,社会に分かりやすい形式で正確,迅速に本学に関する情報を社会に提供することができようになった。今後,社会に対する説明責任を果たすために情報を効果的に公開・発信し大学の発展に資することができるよう活用したいと考えている。

<男女共同参画の推進>
 男女共同参画を推進する観点から,「男女共同参画宣言」を発表し「男女共同参画基本計画」を策定,女性教職員が活躍できる環境づくりを推進した。更に,教職員に対し男女共同参画に関する認識を深め,定着させるための啓発活動を引き続き実施していく必要がある。

<専修研究員制度の導入>
 本学が重点的に推進するプロジェクト研究等に,本学に所属する連合研究科修了生を研究者として参画させる専修研究員制度を導入した。このことにより,本学の学術研究の一層の推進と若手研究者の養成が期待される。

<研究活動>
 本学の天野教授が,日本最古のシンカイヒバリガイ類(新種)を発見した。本学の教員の優れた研究成果が日本国内外の研究に対して大きな貢献をなしたことは,大変,栄誉なことである。

 第二章「各教員の教育・研究活動及び社会との連携に関する自己点検・評価」に関しては,各教員は教育活動,研究活動,社会との連携活動について,積極的に取り組んでいることが伺えます。特に近年は,社会的活動状況が増加傾向を示しています。これは,教員の養成のみならず教育研究成果を社会に還元し,地域と共に学びの場を創造するという,本学大学憲章の理念が浸透してきていることの証ではないかと思っています。また,本年度は自己点検・評価書の回収率が近年最高の98.2%(168人中165人)に達しており,自己点検・評価が一段と根付いてきており,更にこのことが各教員の教育・研究指導の状況に係る自己点検・評価が授業の内容及び方法等の改善に結びついて欲しいと考えています。

 第三章「本学評価基準による自己点検・評価」に関しては,本年度は基準3,4,5,8,14の5つの基準について実施し,各基準とも全て基準を満たしていました。しかし,各基準では更なる向上を目指した取組として「改善を要する点及び今後の検討課題」をあげており,この点を踏まえ各組織では今後の運営に当たるとことを望みます。
 なお,各評価基準における自己点検・評価の要点は,以下のとおりです。

<基準3「教員及び教育支援者」>
 本学では,大学教員人事に係る基本方針を定め教員人事を進めている。教員の配置については,学士課程においては,教育職員免許課程認定上の基準を満たしている。大学院課程(専門職学位課程を除く。)においては,大学院設置基準第9条に適合する教員数を確保している。
 教員選考については基準が定められ,教員の採用や昇格の手続も明確となっている。
 教育支援者としては,教育支援課,学生支援課及び就職支援室の各事務組織を置き,また教育職員免許取得プログラム受講者に対する支援室を設置し,さらに小・中学校長を経験されたキャリアコーディネーターを配置し,加えてティーチング・アシスタントを活用している。

<基準4「学生の受入」>
 学部については,「教育の理念・目的」「養成したい教員像」「求める学生像」からなるアドミッション・ポリシーを定めており,それらを入学者選抜要項,学生募集要項や本学ホームページに掲載することにより十分にその周知を図っている。
 大学院に関しても,本学ホームページに掲載・公表し,また学生募集要項に掲載し,さらに大学院説明会ほか様々な機会をとおして周知を図っている。
 入学者数に関しては,学部では,適切な定員管理が行われているといえる一方,大学院では,入学定員を下回る状況が続いていたが,改善の取組の結果,適正化が図られたため,今後もこれを継続する必要がある。

<基準5「教育内容及び方法」>
(学士課程)
 本学の学士課程では,教養教育に相当する科目から専門的領域に関係する科目へと,学年・段階を追った体系的なカリキュラムを編成しており,科目間での有機的な連携を図っている。教育課程は学生の多様なニーズ,学術の発展動向,社会からの要請に対応した,十分な配慮の基に編成されている。
(大学院課程)
 本学大学院の授業科目は,共通科目と専攻科目がバランス良く編成されており,今日的教育課題に対応できる臨床的な授業科目と実践的指導力を培うための科目が選択必修とされている。

<基準8「研究の水準及び達成状況」>
 本学は,臨床的な実践研究を重点とした,教育研究を目標としていることを明確に示している。
 学校教育実践研究センターでは,数多くの研究プロジェクトを推進している。
 心理教育相談室では,臨床心理学コースの学生等の心理臨床に関わる相談活動に関する教育訓練及び教育研究指導を行うと同時に,心理臨床における研究を推進に寄与している。
 特別支援教育実践研究センターでは,センターセミナー,教材の開発等多様な研究活動を実施している。
 各附属学校ではそれぞれ設定された研究目的に沿った活動を着実に行っている。
 各教員は,教員個人の研究の成果を生かした,教育実践や社会貢献を行っている。
 なお,本学の戦略的研究を基盤とした取組は,文部科学省の各種GPに採択されている。

<基準14「管理運営」>
 本法人の管理運営に当たっては,学長のリーダーシップによる機動的,戦略的な大学運営が図られるよう整備されている。また,適切な規模の事務組織及び広報室並びにエンジン部門と称する企画立案等を主たる任務とする総合企画室等6室1本部を置いている。
 大学の目的を達成するために効果的な意思決定を行うため,理事又は副学長が重要な学内委員会等に委員長として就任することで,学長からの提案の趣旨を十分説明できる体制とし,会議での意見や要望の反映など迅速な対応を可能としている。
 自己点検・評価については,自己点検・評価規則等を定め実施し,評価結果のフォローアップサイクルにより,各組織が具体的な改善に取り組める体制となっている。

 第四章の「資料編」に関しては,本編をご覧いただければ幸いです。

 最後に,本報告書の作成に当たりご協力いただいた本学教職員各位に対して謝意を表すとともに,学内外の関係各位からのご意見・ご助言をいただきたく,この場を借りてお願い申し上げる次第です。

平成 24 年 1 月
上越教育大学副学長
大学評価委員会委員長
川 崎 直 哉