あ と が き


 上越教育大学では,組織,運営,教育研究活動等全般にわたる年次報告書を昭和61年度(昭和60年度版)から作成・発行してきており,この平成23年度版で第27集を刊行するに至りました。このあとがきでは,本年度の年次報告書について各章ごとに総括します。

 第一章「組織の運営状況に関する自己点検・評価」に関しては,管理運営組織等,学生支援,附属施設等においては概ね順調に取り組まれていることが伺えますが,教育・研究組織等に関し,組織の在り方について各組織がそれぞれの立場において課題を挙げています。本学としてもその内容を見極めつつ,更なる向上を図っていく必要があります。
 なお,本年度は,特に注目される点として以下のことをあげることができます。

<学生支援オールインワンカルテシステムの運用 >
 不適応と思われる学生を早期に発見し,その後のケアを支援する,授業出席状況把握,セーフティネット,コミュニティサービスシステムからなる「学生支援オールインワンカルテシステム」の運用のため,同システム管理運用ガイドライン及び同システム管理運用ガイドラインの取扱いを制定した。

<キャンパス敷地内全面禁煙の実施>
 受動喫煙を防止し,学生及び教職員等の健康を守るため,また,将来教育現場に就職することとなる学生に対し,在学中に喫煙習慣を持たせないための環境を整備するため,キャンパス敷地内全面禁煙を実施した。

<教員免許状更新講習の実施>
 県内の国公私立大学等で設立した「教員免許状更新講習コンソーシアム新潟」の幹事として県内で行う教員免許状更新講習の調整を行うとともに,本学では佐渡市,長岡市,上越市で60講習を開講し,延べ2,293人が受講した。

<研究活動>
 本学の濤ア准教授と国立天文台の研究グループの研究成果『「隣」の銀河の星の材料,全貌の把握に成功』について記者会見を行った。本学の教員の優れた研究成果が,本学のみならず日本国内外の研究に対し大きな貢献をなしたことは,大変,栄誉なことである。

 第二章「各教員の教育・研究活動及び社会との連携に関する自己点検・評価」に関しては,各教員は教育活動,研究活動,社会との連携活動について,積極的に取り組んでいることが伺えます。特に近年は,社会的活動状況が増加傾向を示しています。これは,教員の養成のみならず教育研究成果を社会に還元し,地域と共に学びの場を創造するという,本学大学憲章の理念が浸透してきていることの証ではないかと思っています。また,本年度は自己点検・評価書の回収率が近年最高の98.8%(163人中161人)に達しており,自己点検・評価が一段と根付いてきており,更にこのことが各教員の教育・研究指導の状況に係る自己点検・評価が授業の内容及び方法等の改善に結びついて欲しいと考えています。

 第三章「本学評価基準に基づく自己点検・評価」に関しては,本年度は基準6,7,9,10の4つの基準について実施し,各基準とも全て基準を満たしていました。しかし,各基準では更なる向上を目指した取組として「改善を要する点及び今後の検討課題」をあげており,この点を踏まえ各組織では今後の運営に当たることを望みます。
 なお,各評価基準における自己点検・評価の要点は,以下のとおりです。

<基準6「教育の成果」>
 学修成果を確認する具体的項目と到達目標を示した「上越教育大学スタンダード」,また,教員になる上で学生が修得すべき知識・理解・技能等の一覧である「上越教育大学スタンダードに準拠させて設定した教科のルーブリック及び知識・理解・技能等」が作成されており,現行カリキュラムの検証及び充実・改善に資するものとなっている。
 教員免許状取得,単位修得,卒業(修了),休学・退学,卒業論文・修士論文判定の状況及び学生による授業評価アンケートの結果,また,卒業(修了)生就職先等関係者への意見聴取等の結果が良好であることから,教育の成果・効果は上がっていると判断する。

<基準7「教育の質の向上及び改善のためのシステム」>
 教育の状況に関する活動の実態を示す資料・データは,「年次報告書」,「基礎資料」として毎年度継続的に蓄積を行っている。
 学生の意見の聴取方法としては,毎学期ごとに全学生,全授業を対象として「学生による授業評価アンケート」を行い,その結果については,全教員にフィードバックし,「自己評価レポート」としての提出を各教員に義務付けている。それらを授業評価報告書として公表し,学生及び教員の相互理解を深めるとともに教育内容等の改善に努めている。
 また,学外関係者からの意見を聴取するため,教育委員会や教育実習協力校との意見交換会の開催,卒業生や卒業生が勤務する教育現場に「教員の資質能力の向上に係る基礎的調査」を実施し,そこで得られた意見は教育の改善に反映させている。

<基準9「学生支援等」>
 履修指導については,新入生に対しては新入生オリエンテーションを,その後は学士課程ではクラス担当教員,大学院修士課程では専門セミナー担当教員,大学院専門職学位課程ではアドバイザーが学習相談・助言を行っている。学生に対する学習相談や生活相談等については,全教員が実施しているオフィスアワーや「学生なんでも相談窓口」の設置により,あらゆる相談に対応する体制を整えている。学生への経済的支援については,本学独自の奨学金制度「上越教育大学くびきの奨学金」を立ち上げている。
 修学,就職,及び生活に関する総合的な学生支援体制を構築・機能させることを目的として総合学生支援室を設置している。

<基準10「国際交流」>
 学生の短期海外研修は,「海外教育(特別)研究」及び「海外フィールド・スタディ」が授業科目として開設され,そのプログラム内容についても充実が図られている。外国人留学生への支援においては,特に「外国人留学生補講プログラム」の実施や「日本語学習指導チューター」の導入が高い効果をあげている。
 国際交流及び留学生交流の推進に寄与するため,国際交流推進室が設置されており,他の組織との連携を図りながら様々な事業を展開している。

 最後に,第四章の「資料編」に関しては,本編をご覧いただきたいこと,並びに本報告書の作成にご協力いただいた教職員各位に対して謝意を表すとともに,学内外の関係各位からのご意見・ご助言をいただきたく,この場を借りてお願い申し上げる次第です。

平成 25 年 1 月
上越教育大学副学長
大学評価委員会委員長
川 崎 直 哉