上越教育大学大学院 学校教育研究科 学校教育専攻
発達支援教育コース(学校ヘルスケア)
近年、児童生徒の食生活を取り巻く状況が大きく変化し、学校における食育の推進が求められています。国全体としての食育推進の根拠となる法律として2005年に「食育基本法」が制定され、2006年から5年毎に「食育推進基本計画」が進められているなか、小学校及び中学校の学習指導要領総則(2008年3月告示)に「学校における食育の推進」が位置づけられ、学校給食を生きた教材として活用しつつ、関連する各教科等においても学校における食育の推進に関連する内容が充実し、多くの学校現場において学校全体で食育が実践されています。
学校ヘルスケア領域では、教育現場におけるそれらの食育の推進に関する専門高度な教育?研究を行いながら、科学的な視点から食育推進の評価?検証を行う知識?技術を習得することが出来ます。また、学校?家庭?地域の連携ですすめる食育に関しても現場の関係各機関との連携によって実践的に学ぶことが出来ます。
栄養教諭の職務
栄養教諭の職務は、食に関する指導と給食管理を一体のものとして行うことによって教育上の高い相乗効果がもたらされるとされています。
(1)食に関する指導
?肥満、偏食、食物アレルギーなどの児童生徒に対する個別指導を行うこと
?学級活動、教科、学校行事等の時間に、学級担任等と連携して、集団的な食に関する指導を行うこと
?他の教職員や家庭?地域と連携した食に関する指導を推進するための連絡?調整を行うこと
(2)学校給食の管理
?栄養管理
?衛生管理
?検食
?物資管理等
学校ヘルスケアでは、「食に関する指導」と「給食管理」を両軸とした栄養教諭の職務の効率化や有効性に関する教育?研究を行い、今後のより良い食育推進のあり方を考えています。
栄養教諭免許
栄養教諭の「普通免許状」には下表のように「専修免許」「一種免許」「二種免許」の3種類があります。
専修免許:修士(大学院修士課程修了)、管理栄養士免許
一種免許:管理栄養士養成課程卒業、栄養士免許
二種免許:栄養士養成課程卒業、栄養士免許
?教育学を基盤として学校全体や教育カリキュラムにおける食育を捉える ?学校現場におけるこれまでの食育の実践から得られた成果や課題を学術的に省察する ?学校現場における食育実践の成果や有効性を学会発表や論文としてまとめる ?栄養教諭を目指す若い学生と共に学ぶことにより新鮮な疑問や若い熱意と触れ合う ?指導的立場(教育委員会指導主事や栄養教諭養成大学の教員として)への転身の準備 ?現有する栄養教諭免許の他に新しい免許科目の追加(中学校?高等学校(保健)) |
以上のように、栄養教諭として毎日の目の前の仕事に追われる中では実現することが出来ない学び(知識や技術の習得)や視点(自分の周りだけではなく栄養教諭全体を考えること)や経験(科学的視点で食育を捉えて分析?発表)を得ることが出来ます。
管理栄養士養成校における4年間の学びの中で、栄養教諭として自信を持って学校現場に立つ実力はついているでしょうか。特に、社会に出る直前の4年生の時期には管理栄養士国家試験対策に集中するため、管理栄養士や栄養教諭としての「栄養教育の能力」を身に付ける時間が足りないと感じていませんか。
管理栄養士養成校を卒業予定の現役学生の皆さんが、学校ヘルスケア領域で学ぶ利点はたくさんあります。
?教育学を基盤として学校全体や教育カリキュラムにおける食育を捉える ?学部の卒業研究(卒業論文)で実施したテーマをさらに発展させた研究を行う ?栄養教諭の職務(食に関する指導と給食管理)に関する知識?技術を向上させることが出来る ?全国の教育委員会の栄養教諭採用試験の過去問題が全て保有されてあり、いつでも試験対策が出来る ?免許プログラム(免P)を利用することで、他の教員免許状を取得することが出来る (小学校、中学校?高等学校(保健)、中学校?高等学校(家庭)等) |
以上のように、将来、栄養教諭として学校現場に立つための知識?技術?能力を大学院の2年間で習得することが出来ます。
?健康増進、医療、介護、福祉、給食管理に関わる管理栄養士?栄養士の方へ
管理栄養士?栄養士の養成校を卒業してから積み重ねた現場経験によって、管理栄養士?栄養士としての実践力がついていることと思います。しかし、管理栄養士?栄養士として重要視される「対象者の結果評価に基づく栄養管理(栄養ケア?マネジメント)の質」の評価はいかがでしょうか。日々の現場のデータを積み重ねることによる栄養管理の有効性を示すことが出来ているでしょうか。管理栄養士としての長い人生の中で、現場の管理栄養士?栄養士としての業務の質の向上や対象者への栄養教育の有効性の評価のために、一度は「大学院での学び」を経験されることをお勧めします。医学や看護学の分野における大学院は、専門高度な教育を受ける場所として存在するだけではなく、現場におけるデータを大学院教員と一緒に研究?分析し、学会や論文にて発表することで多くの最新の知見を積み上げる存在でもあります。次々と出される最新の現場データの蓄積によって、国や都道府県の政策や計画に活かされるとともに、それぞれの職種の必要性?有効性を提示する根拠として活用されています。
現在、栄養系の多くの学会?協会がそれぞれの特徴を活かした研修制度を立ちあげ、多くの管理栄養士が自己研鑽も含めた教育?学習に力を注いでいます。もちろん、多様な内容を選択することが可能であり、コンパクトに学ぶことが出来ることから、それらの研修における学びも大切でありますが、現在の管理栄養士?栄養士の学びの方法として他の医療職種と比べて圧倒的に少ないのが、現場のデータを科学的に評価し、まとめ、発表する力を身につけるための「大学院での学び」へのチャレンジです。
大学院では、研究的視点から文献を検索する方法や研究計画立案について学びます。また、得られたデータを解析?考察し結論に導く視点や、発表資料や原稿の作成、学会発表や論文発表として新しい知見を積み上げることを学びます。「大学院での学び」が他の一般的な研修と大きく違う点は、指導教員と大学院生の立場が近いことであり、専門家である大学院教員に、いつでも、直接、自分が理解できるまで質問することが可能です。また、大学院では年齢?性別?経験が多様な先輩や研究室メンバーにいつでも気軽に相談することも可能であり、研究データを解析するための手技?手法を学ぶためのPCや統計解析ソフトを自由に使うことも可能であり、最新の文献を得ることが出来る図書館HPにアクセスすることも可能であることなど、「大学院での学び」の利点はたくさんあります。
つまり、今後の管理栄養士?栄養士による実践的な栄養学の発展のためには、現場を経験した管理栄養士がリカレント教育(学びなおし)として大学院に進学し、日々の業務の効率化を図ることや現場のデータをまとめ発表することが重要であり、管理栄養士?栄養士のそれぞれの現場における有効性を示すことにつながっていくことでしょう。
また、学部卒業直後や数年以内に大学院へ進学し、早い段階から多くの先輩とともに学び研究することは、将来の自分への投資としてはとても大きな財産になることでしょう。 |
学校ヘルスケア領域では、管理栄養士?栄養士の現場経験者や管理栄養士?栄養士養成校からの現役学生の直接の進学も歓迎いたします。また、現職を有する管理栄養士?栄養士の方の履修等に関しても柔軟に対応させていただきます。
?大学院進学に関するお問い合わせについて
大学院での教育?研究内容や大学院入試に関するご質問等に関しましては、教員スタッフ紹介のページにあります各教員宛にメールにてお問い合わせ下さい。
学校ヘルスケア領域の充実した教育?研究施設を見学希望の方は、大学HPに掲載されています本学が主催する大学院説明会にお越しいただき、大学や施設の様子などを直接ご覧いただくことをお勧めします。また、大学院説明会の日程以外であっても、ご希望があれば、大学院施設見学を対応いたします。
また、学校ヘルスケアの教員スタッフや在学生が大学に出向いて大学院紹介等の説明する機会を設けることも出来ますので、是非ご連絡下さい。