少しばかり悲しいお話をしなければなりません。
新型コロナ感染症は、東京都等の日々の感染者数を見ると、収束しつつあるようにも見えますが、しかし、2週間ほど前の人出の影響を受けるので、この現象は一時的なもので収束はまだまだ先だという見解も報道では流れています。
本学の関係者も、感染者になったり、濃厚接触者になったりしていますが、それでも、これまでのところクラスターにはならず、なんとか落ち着いて推移しているように見受けられます。
ところが、本学においても、うわさやデマを基にして差別的な言葉を掛けられるような事態が生じているという情報が私の耳にも入りました。私はこの話を聞いたときに、怒りでもなく、責める気持ちでもなく、ただ悲しいと感じました。ごく一部の方の行動だろうとは思うものの、本学のような教員養成系の大学において、こうした事態が起こるということはじつに悲しいことです。また私たちの行っている教育がまだまだ十分なものではないのだとも思いました。
今の状況を考えると、誰が感染者になってもおかしくはないでしょう。感染者を特定し感染したことを責めるのではなく、いたわり合う気持ちをもって互いに助け合う行動をしていただきたいと思います。
いじめや差別などの人権侵害行為に関しては、加害者は自分が行っているひどい行為に気づかないことも多いのです。また、自分の行為を正当化しようとするバイアスがかかるというようなこともあります。もちろん、だからといって許されることではありません。大事なことは、被害者になる人の気持ちを考える想像力だと思います。そうした想像力をもって子どもたちに接し、自らの行動をコントロールする力は、教員にとっては必要な能力です。皆さんは、教員になることを目指しているのですから、そのような能力をぜひ身につけていただきたいと思います。
大学も、安全を優先して、さまざまな対応をします。そのことによって皆さんが疑心暗鬼に陥るのかもしれませんが、予防的な対応も必要なことですので、その点を十分に理解してください。今しばらくは、まだ密を避ける生活が求められますので、互いにいたわり合いながらも、感染を防ぐ生活をしていきましょう。
令和3年9月9日
学長 林 泰成
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